大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)470号 判決
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(事實)
原告は農業を営む者であるが、納屋を有しないため係争家屋は唯一の仕事兼物置として是非共必要なものであつたが、知人の申出により被告が他に家を見つけて賃借するに要する期間のみということで昭和二十二年二月被告に賃貸した。然るに被告は相当の月日を経過しても明渡をしないから、昭和二十三年八月自己使用の必要により解約の申入を為し、同年十一月玄関及び土間の明渡を得たが、その他の部分は未だ明渡を受けない。仮に解約申入が理由がないとしても昭和二十三年九月一日以降の賃料不払を理由に契約を解除する。原告はこのように主張して既に明渡を受けた玄関土間以外の部分の明渡及び賃料並びに賃料相当額の損害金の支払を求めた。
被告は原告主張の如き短期間の契約であること及び原告の自己使用の必要性を争い、且つ被告は不便を忍びつつ玄関土間を明渡して誠意を示したこと又他に住居を求める資力がないことを述べ、原告主張の正当の事由を爭う。
(判斷)
原告勝訴。
裁判所はまず原告が係爭家屋を自ら使用するため、原告の知人訴外林を通じて為された被告の賃借申込を拒絶したが、林が世間の住宅事情や被告が住宅に困つていることを説き、他に家を探すまで暫くの間だけでも貸すよう無理に頼んだため、原告も漸く被告に貸すことを承諾した事実、次で原告が昭和二十五年九月以降は專業農家であり、係爭家屋を納屋として自ら使用する必要があることを認定した後、被告が資力に乏しく移転先を見つけることが非常に困難なことを認めながらも、次のように判示して原告の請求を認容した。
「賃貸人が家屋の明渡を求めるに付借家法第一条ノ二に所謂正当の事由があるか否かを考えるに際しては勿論当事者双方の事情を公平に比較して之を決定すべきであるが、此の考慮に付ては最初に認定した本件賃貸借契約の創設当時の事情即ち原告としては自己使用の為賃貸借を極力拒絶したに拘らず終戦後の特別の住宅事情から他に借家が見附かる迄暫くの間と言うことで知人を介して切に依頼された結果己むを得ず之を承諾したとの事実も十分之を斟酌しなければならないのであつて、斯樣な特別の事情から結ばれた賃貸借契約に於ては、其の後相当の期間を経過して貸主に於ても真に之を使用するを必要とする事情が生じたに拘らず借主側に於て転居先が見附かりさえしなければいつまでも明渡を拒絶することが出来ると解釈するのでは最初の約束の趣旨が全く沒却され、事実上長期の賃貸借契約を結んだのと同樣の結果を生じ、賃貸人を不当に拘束するものであつて、到底両者の利害関係を公平に規律する所以ではなく此の場合には賃貸人の主観的事情が或る程度借主側の事情より優先するものと認めねばならない。」